コロナ禍でもテレワークが普及しない5つの理由

日本国内で新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されるようになってから、季節は再び(日本国内でも感染が確認され始めた)冬へと向かっています。

日本国民の大多数が「コロナにかかったらどうしよう…」という不安と「気軽に出かけられない」というストレスを抱えている中、日常生活で最も感染リスクの高そうな通勤時の満員電車に乗る機会を減らすべく「在宅勤務」や「テレワーク」と言った「新しい働き方」を模索する動きも起こっています。

しかし、平日の朝になればいつもとあまり変わらぬ駅ホームの光景を目の当たりにして「コロナが騒がれているのに、何も変わらない」と余計なストレスを感じる方も多い事でしょう。それと同時に「なんでみんな在宅勤務にしないんだろう?」とも。

本記事では『新しい働き方』として推奨されている在宅勤務・テレワークが普及しない理由について、紹介していきます。

在宅勤務・テレワークが不可能な場合

はじめに、世の中には在宅勤務・テレワークが絶対に行えない職業があります。

具体例としては、小売・美容師・消防士など。個人商店や個人で経営するサロンなどはまた別ですが…。

小売に言及しておくと、今やAmazonや楽天と言った大手ショッピングサイトから自社経営のECサイトなど、インターネット上で取引が可能なイメージもありますが、それら商品の梱包や輸送には必ず人手が必要になります。

逆に、現物を扱わない仕事が在宅勤務・テレワークが可能な仕事である、とも言えそうです。

不動産の営業などではVR技術を用いたHUDによるVR内見の様な方法もありますが、それも物件に足を運ばないだけで営業マンと顧客の対面は不可欠です。

VR内見に関連して個人的な見解

住居は人間の生活の根底にある為、賃貸・売買に関わらず雰囲気を肌で感じて「よし、ここにしよう」と決断するものだと思っているので、VR内見が本格的に行われるようになったとしても足を運んでの内見が無くなることは無いでしょう。もしVR内見のみで物件を決めるような日常になった場合、不動産営業の仕事がエスカレートしそうです…。実地を、それこそ起居するレベルで感じておかないと顧客に対して営業をかけられないばかりではなく、クレームの種になる可能性も高くなります。

在宅勤務・テレワークが可能な場合

在宅勤務・テレワークがそもそも出来ない職業を確認したところで、在宅勤務・テレワークが可能なのにしていない職業に焦点を当てて、その理由を紹介していきます。

※在宅勤務・テレワークへの移行出来る可能性の高い職業として、システムエンジニア(以下、SE)を念頭に置いて話を進めます。

評価制度が伴っていない

「終身雇用制度は崩壊した」と言われる日本ですが、今なお年功序列という考え方からは抜け切れず、人事評価・給与において実績よりも勤続年数によるところが大きいのが現状です。

言い換えれば、仕事の質ではなく量(時間)で判断している事になるのですが、これは「残業している人の方が頑張っている」と捉える風潮から考えても明らかではないでしょうか。本来残業とは、定時内に仕事を完了できなかったために致し方なく行うものであって、評価としてはマイナスに傾くものです。ただし、残業が発生したからと言って作業者本人だけに責任があるのではなく、管理側にも責任がある場合も少なく無いでしょう。

このように会社が時間で社員を評価する傾向がまだまだ少なく無いため、働いている姿を確認できない在宅勤務・テレワークに従事する社員を評価出来ないのです。

管理職の立場からすれば「働いている姿が見えないのに、どうやって評価すればいいんだ」と言ったところでしょうか。しかし考えてもみてください。仕事とは必ず成果が発生するものです。その成果を評価すればいいだけなのですが…。

会社組織の責任放棄

年功序列制度の根底にある「経験年数が増えればそれだけ仕事の能力も上がる」のは当然の様に思われますが、社員が多ければその分「経験年数だけ多くて仕事の出来ない人」や「経験年数は浅いのに抜群に仕事が出来る人」が出てきます。これらを正当に評価せず、平均化して評価するのは会社組織の責任放棄と言わざるを得ません。

導入コストがかかる

在宅勤務・テレワークを行うにあたって必要な機材がいくつかあります。

まず第一にパソコン。

企業や業種によっては主に使用するのがノートパソコンという例もあるかもしれませんが、だいたいの企業ではデスクトップ型のパソコンを利用しているのではないでしょうか。

その理由に関しては割愛しますが、オフィス内での作業には向いていたデスクトップ型も、在宅勤務・テレワークを行うにあたっては「持ち運びが容易ではない」点で不利になります。

結果として、配送の手配や持ち運びが出来るノートパソコンの新規購入などのコストが発生するだけではなく、仮に配送を選んだ場合には輸送中の破損というリスクも生じます。

そしてもちろん、在宅勤務・テレワークを行う場所(主に自宅など)での破損というリスクも。(オフィスにおいては「破損しにくい場所」に設置してある前提です。)

第二に、パソコンがあってもオフラインでは業務上のやり取りが他のメンバーと出来ないので、ネットワークも不可欠です。

自宅にインターネット回線を引いている、あるいはモバイルルーターを契約している場合にはそれらを使用することも出来ますが、企業としてはそれでは許可できないというケースも多々あるかと思います。

その為に新たにVPNを構築したり、モバイルルーターを新規契約する必要が発生する可能性が高く、こちらはパソコンの導入よりは低コストではあるものの、初回の購入費や配送のように一時的に発生する出費ではなく継続的に支払う必要があるので、在宅勤務・テレワークの長期化が見込まれれば元が取れるのではなく積み重なっていく費用になってしまいます。

セキュリティのリスクがある

前項でも若干触れましたが、オフィス外に会社の情報端末を持ち出すのはセキュリティ事故が起こる可能性が高くなることでもあります。

仮にネットワーク回線をセキュアにしたとしても、パソコンそのものを盗まれてしまってはどうしようもありません。オフィスであれば警備会社にある程度保証されていますが、自宅の場合はそれが無いのが一般的ですから。

また、第三者による脅威だけではなく、会社にとっては社員個人が脅威となりうる場合もあります。

パソコンの操作ログを残すように設定されているのが一般的だと思いますが、例えば業務用のパソコンを見ながら自分のパソコンにデータを打ち込む様な操作を検知することは不可能です。

コミュニケーションに不安がある

インタネット・テレビ通話の発達に伴い、離れていてもお互いの顔を見ながら作業をすることも出来るようになりました。

しかし、同じ空間を共有していないからこそ、伝わらない事も多くあるのが事実です。

仕事の場はまだまだ男社会であり「男とは言葉ではなく態度で表すもの」だと幼い頃に見聞きした言葉に(知らずとも)憧れているのですから、言葉にしない・言葉を濁す事なんて日常的に起きうるのです。

何よりも、日本人がそのような感覚を古来から醸成してきたと言っても言い過ぎではないでしょう。「喜色を表に出さない」のが日本人の美徳ですから。

これらが影響しているかどうかは分かりませんが、今裁量権を持つ役職についている方々はそうした社会を渡り歩いてきた人たちです。悪く言えば、現代の若者が持つ「合理主義」に迎合しない人です。

アフターファイブをはじめとする飲みニケーションや喫煙所での雑談が仕事を円滑に運ぶ事も確かにありますが、それが無いと仕事を円滑に進められないというのは、仕事でのコミュニケーションの取り方を学ぶ事を放棄しているとすら言えるのではないでしょうか。

少し話が逸れましたが、『古き良き時代』を生きた人間にとって職場で顔を合わせる機会が失われるというのは、言い知れぬ不安が付きまとうものです。

もしかすると、日本人の和を重んじる精神が、いつのまにか逆転してしまって和に依存しているのかもしれませんね。個が自立してこそ、和の力は最大限発揮されるものなのに。

プライベートとの両立が困難(な場合がある)

例え会社側が在宅勤務・テレワークを推奨したとしても、社員の中には家庭の事情などで自宅での作業が困難な場合があります。

最も大きな理由としては、保育園や幼稚園に通う前の子供(あるいは待機児童)がいることでしょうか。

子供との時間というのは幸せな時間である反面、仕事と同じ空間には同居出来ないのは間違いないでしょう。子供が一緒にいられる仕事の空間というのは、広い意味で成功者とすら言えるかもしれません。

また、今現在家庭を築いている方というのは「男は外に出て仕事」という考えが根強く、その考えによっても自宅で仕事をするという考え方を素直には受け入れられない方も多いものです。

さて、こうした在宅勤務・テレワークを行えない社員が少数でもいるとどうなるのか。

日本は平等という言葉を好む人が多い為に「自宅で働けない人もいるのに、可能な人は在宅なんて不公平だ」ということで、「全員出社すれば平等である」という結論に落ち着くのは明らかです。

まとめ

コロナ禍でもテレワークが普及しない5つの理由
  • 評価制度が伴っていない
    • 不完全な成果主義の為、成果だけで社員を評価することが出来ない。
  • 導入コストがかかる
    • パソコンの新規購入あるいは輸送費用に加えて、ネットワーク料金などがかかる。
  • セキュリティのリスクがある
    • 見えないところで社員が何をしているか把握できない。
  • コミュニケーションに不安がある
    • 言葉あるいは字面だけでは伝えきれないのが、会話である。
  • プライベートとの両立が困難(な場合がある)
    • 人によっては自宅の就業が困難であり、その場合に社会は平等(出社)を選ぶ。

新型コロナウイルスの収束もいまだつかめない中、今後も在宅勤務・テレワークといった『新しい働き方』はもっともっと広がりを見せていくのではないか、と思っています。

最大の障害となるのは日本人らしさでもあるのですが、いつの時代も文明は破壊の後に創造されるもの。

旧態の働き方を一刻も早く脱却し、日本の働き方がより良い方向へと向かっていく事を願うばかりです。

以上です。